「ありのままの自分を受け入れ、いま回復への道なかば」

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『ありのままの自分を受け入れ
 いま回復への道なかば』

  インタビュー☆薬物依存症
  聞き手 ちあき

 薬物依存症の当事者であるAさんにお話をお聞きしました.
 Aさんは、30代前半の女性、現在、回復の道を歩んでおられ、事務のお仕事をされています.


ー今日はありがとうございます.
 1時間程度のお話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします.

ー最初に、ドラッグを始めたきっかけと、その後の経過について、教えてください.

 中学3年生のとき、友人に誘われて、断りきれずにシンナーを吸ったのが一番最初です.
 このときは一度だけで、高校は部活に励んで、周りに薬物やっている人がいても、
 「バカだなあ」くらいに思ってました。
 本格的にドラッグにはまるきっかけは、専門学校生の頃に、当時の彼氏にすすめられたことです.
 彼は、仕事もしていたし、ドラッグをやっていても「ふつう」だったので、あまり抵抗感なく、
 すすめられるままにマリファナを吸うようになりました。
 それから、マヒしていくかんじで、だんだん怖さが薄れていきました.他のドラッグも試しました.
 嫌なことから・・・スッキリするというか、ちょっと元気になるというか.
 「自分を変えてくれる」魔法のくすりのようでした。

ー「自分を変えてくれる」とは?

 「前向きに人付き合いできる自分になる」というかんじでしょうか.
 私は、ずっといわゆる「いい子」だったですけど、心のどこかで、ずっと、
 自分なんかいない方が・・・と感じていました.
 そんな、本当は消極的な自分を、ドラックで、積極的な自分に変えられたような気がしていました.
 ドラッグをやっていると、人が寄って来たというのもあります.それはドラッグが目当てだった
 わけですが.これは後になっって気がついたんですけれど・・・

ーどれくらいの期間ではまっていきましたか?具体的にはどんな状態になりましたか?

 ・・・実は、きちんとした記憶がなくて、気がついたら頭の中はドラッグのことだけでした.
 それまでに、Ⅰ−2年だったと思います.たぶんですが・・・
 例えば、1人でいて、夜寝る前だとか、学校に行きたくないときとか、気持ちを切り替えたいときに、
 ドラッグのことが浮かんでくるんです.自分を奮い立たせたいときだとか.
 本当に、ひとときも、ドラッグのことが頭から離れなくなります.
 そして、自分が全く気づかない間に、そんな状態になっていました.
 私は元々、マンガを描いたり、日記を書いたりして、気持ちを発散させていましたが、
 ドラッグと出会って、当時は、スゴイ発散方法を見つけちゃった、というような感覚だった
 かもしれません.他の方法がなくなっていきました。
 実は今でも、気持ちを奮い立たせたいときには、ドラッグのことが頭をよぎります.後遺症ですね.
 ドラッグをやめてから10年近く経ちますけど、それは今も同じです.

ードラッグは、強力に気分を変えられるものだったんですね.だから、気づかない内にはまってしまう.
 ヤバいという感覚はありましたか?

 ありました.バレたら退学になる、親も悲しむ、警察につかまる・・・と.
 それは病気の症状だったかもと、後で教えてもらいましたが、警察につかまる気がしてこそこそしたり.
 家から出なければ、ドラッグを使わなくて済むと思って、食料品をたくさん買い込んで、
 家に籠ったりしていました.でも、「最後に一服してから」と結局やめることはできませんでした.

ー回復に向けて転機になったことは?

 一緒にドラッグをやっていた人が、事故死する出来事がありました.
 衝撃的でした.ドラッグで命を落とすことがある、それもこんなに身近なところで.
 とても悲しいお葬式で・・・誰も何も言えなかった。私も、他の人も、みんながその場から
 逃げ出したい気持ちだったと思います.

ーそれが、ドラッグをやめるきっかけに?

 それでもやめられなかったんです.それでもドラッグを追い出せなかった自分を責めて、
 そして、すごく悲しくなって.
 正直、やめるのは簡単だと思ってました.その気になればいつだってやめられる、と.
 意思は強い方だと思いますし・・・

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ー意思の強さに関わらず、知人の死という出来事でも、やめられなかったドラッグ.
 本当の回復の契機になったものはなんだったんですか?

 ・・・1つは、ドラッグを使わない仲間との出会い.
 ・・・もう1つは、自助グループの仲間との出会い.でしょうか.
 ドラッグを使わない仲間は、ドラッグを使っていないのに、すごく楽しそうにしているんです.
 ドラッグを使ってないときの自分って、人前でものすごく緊張してて、チックが出てて、
 消極的な自分だけど、そういうのを全く気にしない.
 それが嬉しくて、ドラッグとは違う「居心地のよさ」を感じました.
 この仲間たちといたい、って思ったときに、ドラッグを使ってる自分を本当になんとかしたい
 と思って、ネットで薬物依存症のことを調べました.
 そこでたどり着いたのが、自助グループでした.

ー「居心地のよさ」という言葉がでてきましたが
 それまで、ありのままの自分で居心地よくいられる場所って・・・?

 小学生の頃は、ものすごく緊張しやすいタイプで、あまりしゃべらない子どもでした.
 それが、中学生になって、スポーツに打ち込むようになって、スイッチを切り替えて、
 今度は「がんばる自分」にメーターを振り切って、とにかく、期待に応えよう応えようと頑張りました.

ー今で言うキャラ作りをして、頑張っていたわけですね.

 そうそう.キャラ作り.どこかで、居場所のなさをずっと感じていました.学校にも、家庭にも.
 高校を卒業して家を出て、それまでの(一見)健康的な人間関係は全部、自分から断って、
 これからは好きに生きようというか.
 部活も受験も終わって、ぽっかりしたときに、身近にドラッグがありました.

ードラッグを始めたきっかけも、やめるきっかけも、人、だったんですね.
 ドラッグを使わない仲間、自助グループの仲間との出会いがあり.
 最初に自助グループに足を運ぶのは、とても勇気のいることだったと思いますが・・・

 ええ、なかなか入れなくて、実は会場に行っては帰ることを何度か繰り返して.
 受け入れてもらえるか不安だったし.
 それで、ウロウロしてたら、握手の手を差し伸べてくれるお姉さんが現れたんです.
 歓迎してもらえたんです.ハグされたり・・・照れくさいやら、恥ずかしいやら、嬉しいやら.
 3回目くらいのときに、ドラッグが頭から離れないことを勇気を出していったら、
 共感してもらえた.自分たちもそうよって.気楽なかんじで.
 ドラッグだから、話したら怒られるかも、てどっかで思ってるわけです.
 言っても怒られない、怒られるどころか共感してもらえる.
 自助グループの仲間に出会う中で、あー今生きてるんだなあ、って感じました.
 初めて、生きてみようと思いました.ひとまず、30歳を目標に(笑).
 今になって、そうですねー、生きてたらいいこともあるかもよって、やっと感じられます.

ー振り返ってみて、Aさんにとって、ドラッグってどういうものだったんだと思いますか?

 こんな言い方は誤解を招くかもしれないけど・・・死んじゃってたかもと思います.
 ドラッグがなかったら.
 自分の、ぽっかりとあいた穴を、埋めてくれていたのかもと思います.
 本当の自分を出せていたら、違っていたかもしれない。

ー・・・その時期を、生き抜くために、必要なものだったという一面もあったのかも、と.
 今、ドラッグの入り口にいるかもしれない子どもたちへ、Aさんから何か伝えるとしたら?

 出会って欲しくないと思う.ドラッグに.危険だし、死ぬ子もいるし、やめるのもほんとに大変だし.
 ドラッグでつながる人は、くすり欲しさの人間関係だし。
 ドラッグは本当に、進行していくこと.
 自分も、全然気がつかないうちに、どっぷり依存症になってました.
 そういう怖さは、やっぱり知っておいて欲しいです.

 そして、「いつ出会うのかわからないけど、いつか、素の自分を受け入れてくれる場所や人が、
 必ずどこかにあるよ」ということを伝えたいです.
 無理にドラッグに走らなくてもいいし、そんなにいい子じゃなくてもいい.

 振り返ってみて、自分の意思で、断るポイントっていっぱいあったと思うんです.
 これは、ドラッグだけじゃなくて.
 嫌なときは、たとえ口には出せなくっても、嫌だってこと、思っててもよかったんだなあーなんて.
 ちょっと頑張りすぎてたかなあって.
 頑張ることは悪いことじゃないけど、ちょっと頑張り過ぎてたというか.
 誰かを信用して、しんどいって言ってもよかったかなあ.

ー信用できる誰か・・・難しいけど、周りにいる大人の人には、そういう子どもの気持ちを大切にして
 欲しいですね.

 先生方へ.先生だけでなく周りの大人の人へ、お願いなんですけど、子どもが、何かドラッグにしても
 それ以外のことでも、打ち明けにくいことを話しれくれたら、怒らないでいて欲しいと思います.
 自分は、相談できなかったけど.
 怒らないで、むしろ「よく話してくれたね」って褒めて欲しい.
 そういう大人の人が、子どもの周りに1人でも多くいたら、たとえ、ドラッグにはまりそうになっても、
 はまっても、早く立ち直れる気がします.

ー今でも、ドラッグが頭をよぎることがあると、先ほどおっしゃっていました.
 ドラッグをやめ続けていらっしゃるAさんの支えになっているものとは?

 人とのつながり.ドラッグ使いたいなあと感じるときは、電話できる人がいたりして.
 切れずに、ほどよく繋がれる人間関係があって、そんなみんなのサポートがあって、
 今の自分があると思います.真面目に話してちょっと照れくさくなったんですが、
 本当にみんなに助けられて、今があるとあらためて感じました.

ー今日は、お会いできて、お話できてよかったです.話しにくいこともあったかと思いますが
 丁寧にお話をしていただき、どうもありがとうございました.

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 Aさん、とても穏やかな表情で、ちょっぴり照れくさそうに、お話をして下さいました.
 ダメ!絶対!の薬物乱用防止教室だけでなく、生きずらさを感じて頑張っている子に、
 気がつける大人の存在や、打ち明けにくいことを話してくれた時に、しっかり受け止めて
 褒めてあげること.とても大切なキーワードだと思います.
 人との繋がりが希薄になりがちだけど・・・やっぱり、人との繋がりってなくてはならないものだと
 再認識しました.
 今日はいろんな気づきのあるインタビューでした.Aさん、本当にありがとうございました.
 そして最後まで読んで下さったみなさん、ありがとうございました.ちあき




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